Garage Coffee

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ベンリィに60年ぶりに出会った。

中学生の頃、オヤジの目を盗んでベンリィを勝手に乗り回していた。何でベンリィだけ号がつくのかいまだに良くわからない。巨人軍と同じだ。時代は野蛮で混沌としていて、腹に晒しを巻いてダンプで殴り込みをした同級生もいて、無免許でベンリィに乗るのは当たり前だった。

房州一週ドライブ

その同級生と二人で房州一週ドライブに出かけた。途中、館山で舗装されてない道路の穴に突っ込み、二人共10メートルも飛ばされたが、猿のようにすばしこいので怪我はしなかった。バイクは大破し走行不能になったので、近所のバイク屋に売り飛ばし、汽車で帰宅した。オヤジから大目玉と思ったら、案外軽く済んだのは不思議だった。お袋が手をまわしたらしい。

ベンリィに60年ぶりに出会った

友人から壊れかけ、錆びだらけのベンリィ号をなんの前触れもなく譲ってもらった時、あの頃の甘酸っぱい、ほろ苦い感傷が押し寄せてきた。猛然とレストアへの意欲がわいきて、すぐさまベンリィ用の黒いペイントを発注した。ガレージの友人の力を借りながら約1年、ベンリィ号は8割がた修復が終了し、あとは電気系統の検査が済めばいよいよ道路を走ることとなる。ほとんどのパーツは東南アジアの国々からの調達で、マフラーもピカピカに光っており、インターネットは誠に強力な武器となっている。

気持ちはいまだ詰め襟の頃

70を過ぎ足腰が弱り、反射神経は壊滅的に衰え、転んだベンリィを起こす筋肉も怪しく、動体視力も目を覆うばかりだが、バイクの運転免許を取りに、古女房の目を盗みつつ(見つかったら大変)、教習所に通うのが次のステップだ。気持ちは中学生に戻っても、悲しいかな体は70過ぎのロートルからのガレージ報告である。



詰め襟とベンリィ号
青春の思い出はなぜか甘酸っぱい香りがするーーー”前原”



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